円安はほっとけ!
昨今円安に関する記事が紙面を踊らしています。この円安を好ましくないと考える人たちの主張は「行き過ぎた円安を食い止めるために金融引き締めを実施するべきだ」といった具合のものです。
確かに、ものすごい勢いで進む円安が海外からの仕入れコストを底上げしていることは間違いありません。
この円安を抑え込むために金融引き締めをすれば、実際に為替は円高に振れるでしょう。しかし、国内経済の事情を考えずに金融引き締めを行えば、思わぬ副作用を招きかねません。
加えて、そもそも円安とは日本にとって悪いことばかりではありませんし、本質的に為替レートを意図的に操作する必要性はないのです。
この記事では円安が日本経済に与える影響を解説し、現在の日本の採るべきは円安是正でも金融引き締めでもないことをご理解いただければと思います。
そもそも為替レートは操作するものではない
別の記事でもお話ししましたが、そもそも為替レートは2国間の通貨交換比率であり、それ自体特に意味はありません。
お互いの国の政府および中央銀行が、国内経済の状況を見ながら金融政策を決定していきます。その結果として両国間の相対的なマネーの量に差が生じると、為替レートに変化が見られるというのが基本的な考え方です。
すなわち為替レートとはあくまで2国間の金融政策によって半自動的に出てきた結果に過ぎず、これ自体を操作するということは本質的な意味はないのです。
不必要な引き締めがもたらすデメリット
先ほどもお伝えしたように、金融政策はあくまで国内経済の状況を見ながら決定していくのが鉄則です。なぜなら金融政策は自国の物価安定を目的に行われるからです。
為替が円安に進みすぎたという理由で金融引き締めをするという発想自体が本来おかしいのです。
現在の日本はようやく成長が実感できないデフレ経済から脱却しそうなところまで来ているのです。賃上げの話が持ち上がり、値上げに対する抵抗感も徐々に和らいできています。
あともう一押しでデフレを完全に脱することができるというこのタイミングで、もし円高誘導を理由に金融引き締めを実施するとどうなるでしょうか。せっかく浮上してきたインフレがまたデフレ方向へ戻ってしまいます。
国内経済を正しく見ることができているならば、今は金融緩和を継続するべき時です。
円安はGDPを押し上げる
金融政策の扱い方について解説してきましたが、次は円安それ自体が経済にどのような影響を及ぼすのかについて考えてみましょう。
円安は輸入コストを押し上げる一方で、輸出企業にとっては有利な状況です。実際トヨタ自動車など輸出で稼ぐ企業は大きく業績を伸ばしています。
全体を俯瞰して見ても円安が経済全体に与える影響はトータルでプラスという見方が有識者の間では強いです。
自動車で考えれば、完成品メーカーが海外で仕事を取ってくれば、その分国内のサプライヤーも一緒に仕事が増えるのは当然のことでしょう。
円安と金融緩和で日本経済は復活する
ここまで金融緩和の本来の扱い方、円安のメリットとデメリットを解説してきて円安がさほど悪いものではないということがごりかいいただけたかなと思います。
今の日本にとって金融緩和は国内経済を盛り上げるために当然の政策ですし、円安というのは必ずしも忌避するものではないのです。
為替レートの上下にかかわらず、日本政府および日銀には正しい経済政策を取り続けていただくことを切に願いたいと思います。
更新日 2024/6/5