FRB利下げに慎重なのはなぜ
先日22日、アメリカの中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)は4月30日および5月1日に開いた前回連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公表しました。その内容から利下げには慎重な姿勢であることが判明しました。
現在のアメリカ経済はコロナ禍に実施した大胆な金融緩和によって高騰した物価を抑制するために利上げを行い、加熱した景気を冷まそうとしている最中です。
しかし、FRBが急ピッチで利上げを続けるもなかなか物価が抑制されていないのが今の彼らの悩みの種です。
そんな中でようやく消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が目標の2%に近づきつつあるため、市場は逆に利下げをして物価が落ち込みすぎないように調整するのではという予測がされていました。
ところが直近に行われたFOMCでは利上げはおろか利下げにも慎重であることが判明しました。なぜ利下げをしないのか非常に気になるところですが、こればかりは明確な理由を確認する術はなく、FRB関係者の発言から推測するしかないのが正直なところです。
予想よりも高い物価上昇率を懸念か
1つ考えられることとして、会合の後に行われた会見にてFRBトップのパウエル議長が「今年これまでに入手できたインフレデータは予想よりも高かった」と発言しているのです。
つまり、予想していたよりもインフレ率が上振れしていると発言したのです。4月の食品・エネルギーを除くCPIの前年比が3.6%ですから、FRBが予想した通りのインフレ率であれば2%にかなり近い数字になっていたと予測していたのかもしれません。
それが思い通りにいかない、なにかイレギュラーなことが起こっているのではないか?と下手に利率を動かすリスクを取るよりも、状況を見定めるべきと判断した可能性はあるのかなと思います。
日米の金利差はしばらく縮まらない
このFOMCの決定が日本経済にどう影響するのかについてですが、円安傾向はしばらく続くと思われます。
そもそもなぜこれほどにも円安が進んだかというと、日本がいまだインフレターゲット2%を達成できずに金融緩和を継続している一方、アメリカは景気を落ち着かせるために利上げを行っているからです。
日本は金融緩和でお金の量を増やす一方、アメリカは引き締めてお金の量を絞っています。その結果が為替レートという形で表れているのです。
アメリカは自国経済を見て政策を決めている
アメリカはあくまで国内の経済情勢によって金融政策を決定しています。日本もアベノミクスでは同様でした。インフレ率が目標値に上昇するまで金融緩和を続ける姿勢を見せていました。これを目標に対してコミットすると言います。
ところが岸田内閣になって潮目が変わってしまいました。円安が進むたびに「円安是正に向けて金融引き締めを!」と一部の政治家や経済評論家は叫んでいます。
金融政策は自国経済を見て決定されるべきものです。アメリカがどんな政策を行っていようとも関係ありません。
そういう意味で、さすが世界経済の中心であるアメリカの中央銀行は金融政策の決定プロセスは立派なものです。
インフレターゲット2%の安定的な達成が完全に見込めない状況で利上げを決めた日銀ですが、是非ともFRBの「仕事の進め方」を見習っていただきたいものです。
2024/5/24