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【よく聞くけど】悪い円安って何ですか?

悪い円安とはなんなのか

今回は悪い円安についてです。テレビのニュースやワイドショーで聞いたことありますよね?「悪い円安」。

この悪い円安の意味するところは「円安だと海外から現在輸入する際に割高となって部品などを製造している中小企業の経営が苦しくなって困る」ということです。

もういろんなところにつっこみたくなる話ですが、一言で反論するとすれば、「それは悪い円安ではなく、円安の悪い側面でしょ」ということです。

実はわたし、本業は輸入商社の仕入れ担当として働いておりますので今回の円安は苦しいは苦しいです。

それでも円安を一方的に批判することはありません。ここからは円安円高、つまり為替について簡単なところから解説していきたいと思います。

為替のおさらい

為替というのは慣れるまで難しいものです。円安だと海外旅行は行きにくくて・・・あれ?行きやすいんだっけ??みたいな感じでしょうか。
りんごで考えてみましょう。なんでこういうものの例えにりんごを使いたくなるのでしょうか、人間の不思議ですね。

日本で今りんごが1つ100円で、アメリカでは1ドルで売られているとしましょう。そして為替レートは1$100円とします。(100USD/JPYと表記されます。)

アメリカでりんごが売れ行き好調で足らなくなったので日本から輸入することにしました。輸送費などを考えなければ日本で100円のりんごはアメリカで1$ですね。

ところが、為替レートが120USD/JPYへ円安に振れたらどうなるでしょう?りんごの値段は1ドルのままですが、日本の生産者が受け取った代金を日本円へ変えると、今まで100円だったのに突然変異120円へ増えるのです!

1$あたりに必要となる円が増加するのでこれは「円安」ですよね。
先ほどのりんごのように円安状態で輸出すると変化分得します。逆に輸入は受け取る円が減ってしまいます。

円安下では大企業が儲かりやすい

輸出企業はエクセレントカンパニー、つまり大企業が多いです。任天堂やトヨタなど日本を代表する企業は輸出割合が多いですよね。

その輸出企業のサプライヤーとして中小企業が製品を製造するに必要な材料を供給しています。

中小企業は部品を製造するのに必要な原材料を海外から輸入することが多いので円安になると仕入れ単価が増加し経営は苦しくなります。

これが円安の悪い側面です。しかし、だからといって円安それ自体を否定することはできません。

為替はあくまで結果

最初に申し上げたように円安を悪者にしようとしていることが下劣なのです。

為替というのはあくまで結果です。両国間のお金の量の割合だったり、通貨の売買状況など複雑な要因が絡み合った結果、レートという形で表されているに過ぎません。

為替はコインの裏表であり、円安のメリットは円高のデメリットで、逆もしかりです。円高の方が絶対良いなんて口が裂けても言えないはずなのです。

なぜこんなにも円安になった?

ここまでで為替の性質について解説してきました。さて、昨今日本は急激な円安が進行し150~160円前後で推移していますね。

これは主にアメリカと日本の金融政策に起因しています。先ほどもお伝えしたように、為替レートはお金の量の比率の影響を大きく受けるため、両国政府の金融政策の影響を強く受けます。

コロナが明けてから経過が過熱気味だったアメリカは金融引き締めによって景気を冷まそうとしています。

一方、日本はコロナ期間中の経済政策が不十分だったこともあり、金融緩和を解除するほどのインフレ率には達しておらず、政策スタンスを変えずにいました。

アメリカは引き締め、日本は緩和政策を採っていたので相対的に日本のお金の量が多くなり、円安方向に大きく振れました。

これはお互いが自分の国の状況を見ながら経済政策を執行した結果たまたま円安に振れただけであり、円安にしたくて円安になったわけではありません。

金融政策は国内情勢によって決定されるべき

金融政策は自国の経済を理想的な状況にするために実施されるべきであり、「円高に戻すために金融引き締めをするべき」なんて主張はとんでもない暴論といえます。

完全にデフレを脱却していないのに金融引き締めなんて行ったら、せっかく復活の兆しが見えてきた日本経済はまたデフレに逆戻りです。

円安批判論者のみなさまへ

最後に円安を叩く世界中の方々へ苦言を呈して本日は終了としたいと思います。

昨日、日本各企業の年度決算が発表されました。多くの輸出企業の最高益などと景気のいい話が続出しています。トヨタ自動車に格っては純利益4.9兆円です。

これを見てもまだ円高が良いと主張するのでしょうか?大企業を支えているのは部品を提供する中小企業です。円安でメーカーから部品受注が多く舞い込めば企業規模関係なく全員の売り上げが上昇するでしょう。

円安にはもちろんデメリットはありますが、今のところ円高より多くのメリットが認められているといえます。

ちなみに円高の時代、日本は大企業も中小企業も業績はふるいませんでした。経済が好転するにはどちらがマシかは明確でしょう。

最後に、行き過ぎた円安と批判する人々は一体いくらが適切な為替レートと考えているのでしょうか?ぜひ具体的な価格を聞いてみたいものです。

更新日 2024/5/27

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aranishi
大手自動車メーカーから転職し、今は切り花の輸入商社ではたらく20代サラリーマンです。本当にやりたいことが経済学と気づき、日々政治経済に関する発信をしています!